1. モチベーションと従業員満足度の違い

人材マネジメント

モチベーションと従業員満足度の違い

スキルティ 広報部

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2023.06.22(Thu)

たまたま街を歩いていた時にこんな問いかけをされたとしましょう。
「ねぇねぇ。街を行く素敵な大人のそこのあなた。【モチベーション】と【従業員満足度】の違いって何?」

え……、【モチベーション】って「やる気」のことで、【従業員満足度】って、「自分は満足してる」ってことじゃないの?
と思ったそこのあなた。

頭の大きな自称5歳の女の子が出てくる某テレビ局の番組なら、「ボーっと生きてんじゃねぇよ!」と叱られてしまいますが、ここではそんなことはありません。

ちなみに、先ほど挙げた「某テレビ局の番組」風に結論をお答えすると、「【モチベーション】とはやる気のことで、【従業員満足度】とは従業員が会社に満足していること。だけど両者には因果関係がない」となります。

前半は「なるほど!」と思いますが、後半は「どういうこと?」となりますよね。
この記事では、モチベーションと従業員満足度の違いに加え、他の似た言葉の意味も併せて解説していきます。

言葉の意味を知ることでそれぞれの違いをしっかり把握して、「モチベーションと従業員満足度に因果関係がない」理由を解き明かしていきましょう!

モチベーションとは?

日本語は外来語という形で外国語の単語も柔軟に取り込むことが特徴です。
そのため、「意味は分からないけど、みんなが使っているから何となく使っている」という言葉も少なくないですよね。
では、今回のテーマである「モチベーション(motivation)」はどうでしょうか?

一般的に、モチベーション(motivation)は「動機付け」という意味を持ちます。
ここから発展してビジネス用語としては、「仕事に対する力の入れ具合」という意味で使われることが多いです。
要するに、仕事に対するやる気ですね。

仕事に対するやる気というと「ようし! 一丁やってやるか!!」という気持ち一択のように思うかもしれませんが、実はモチベーションは2つのタイプに分けられるんです。

モチベーションの種類
・内発的モチベーション: 自分の内側から湧き出てくる「楽しい」「好き」という感覚から、自らの意思で仕事にのめり込み没頭すること。
・外発的モチベーション: 周囲の環境や直接的なメリットによって生み出される気持ち。外部からの刺激によって高められる。

おそらく、多くの人がイメージする「モチベーション 」は前者の内発的モチベーションでしょうか。
人気アーティスト・DREAMS COME TRUEの曲に『うれしい!たのしい!大好き!』というタイトルのものがありますが、内発的モチベーションは、まさにそういうことなのでしょうね。

一方、外発的モチベーションは分かりやすい言い換えをすると、「ご褒美を目当てに頑張ること」を言います。
例えば子どもの頃に「テストで1科目でも100点取れたら、欲しがっていたあのゲームソフトを買ってあげるよ」と言われて必死に勉強した、という経験のある人も少なくはないですよね。

社会人の外発的モチベーションもこれと似たもので、「良い結果を出したら給与を上げてもらえる」や「頑張ったら上司に評価してもらえる」などが「最終的にもらえるご褒美」があることで促されます。

しかし、外発的モチベーションには、利己的な外発的モチベーションもあるので気を付けなければなりません。

「利己的な外発的モチベーション」とは分かりやすく言い直すと「自分さえ良ければそれで良いという自己チューな気持ち」のことで、「周りを蹴落としてでも自身の収入を上げたい」や「結果のためなら手段を選ばない」などの競争相手を落とし入れてでも自分だけが美味しい思いをしようという行動原理が挙げられます。

利己的な外発的モチベーションに任せた行動は、周囲からすれば「されても嬉しくない」ですよね。
むしろそうしたことを繰り返していると、池井戸潤の銀行員のドラマなら「倍返しだ!」でとんでもない仕打ちを喰らいそうですよね。
そのため、外発的モチベーションは周りに迷惑を被(こうむ)らせない程度のところで留めておきたいものと言えるでしょう。

従業員満足度とは?

それでは、今回の比較対象「従業員満足度」とは何なのでしょうか?
従業員満足度とは、従業員が仕事の内容や報酬、職場の人間関係などにどれほど満足しているかを表した指標のことです。
英語では「Employee Satisfaction」と呼ぶため、頭文字をとって「ES」と表現されることもあります。

ちなみに、この従業員満足度は、労働環境や給与、福利厚生などの待遇面を基準に評価されます。
ただし、分かるのは今の環境や待遇に満足しているかどうかに限られるため、これだけをしていても「従業員の本音は掴めない」んです。
つまり、従業員の本音まで含めた社内の状況を知りたい場合は、従業員満足度+αの調査が必要になるわけです!

その他似た言葉も解説

今回のメインテーマは「モチベーションと従業員満足度の違い」ですが、ここまでで分かったのは、「それぞれの違い」だけです。
ここまでを踏まえて考えると「仕事に対するモチベーションが高い」なら、「従業員満足度が高く」ても不思議はないよねと思ってしまうかもしれません。

しかし、それはあまりにも早合点が過ぎると言えます。
なぜなら、1対1比較をしただけでは見落としが出る場合もあるからです。

そのため、ここでは同じくビジネス用語として使われる

・エンゲージメント
・ロイヤリティ
・コミットメント

という3つの言葉の意味を考えていきたいと思います。

エンゲージメントとは

一般的にエンゲージメント(engagement)は、「約束」や「雇用」、「婚約」などの意味で使われる言葉です。
そこから転じてビジネス用語では、「心理的な繋がり」の意味で使われる言葉となっています。

このエンゲージメントは、

・従業員エンゲージメント
・ワークエンゲージメント

の2種類に分けられ、どちらも「会社を大きく成長させる」上で重要なものなんですよ。
この2つの違いについてはこちらの記事をご参照ください。

「従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違い」

ロイヤルティとは

ロイヤルティ(Loyalty)は一般的に「忠誠」や「忠実」などの意味を持ちます。
そのためビジネス用語でも大きく意味は変わらず「会社や組織への忠誠心」の意味で使われます。

分かりやすいイメージでは、「終身雇用が当たり前だった時代」の働き方が当てはまるでしょうか。
要は、「一度その会社に入ったからには定年退職を迎えるまで勤め続ける。転職や副業なんてもってのほか!」という価値観ですね。

「転職すること自体が当たり前の時代」で働いている身からすると、ドン引きする価値観かもしれませんが、30年ほど前までは至極当たり前のものでした。

要するに「ロイヤルティ」とは「身も心も会社に捧げるくらいの強い気持ち」と言い直せるのかもしれませんね。

コミットメントとは

コミットメント(commitment)は、「委託」や「約束」、「責任」などの意味を持つ言葉です。
そのためこれもロイヤルティと同じく大きく意味を変えずにビジネス用語となっていて、「仕事に対する遂行責任」の意味で使われるが多くあります。

ちなみに、「コミットメント」は省略されて「コミット」と言われることもあるんです。
もしかすると、印象的なジングルでお馴染みのスポーツジムのテレビCMの「結果にコミットする」というフレーズを思い浮かべた人もいますよね。
あれは「結果を約束する」や「結果に責任を持つ」と言っていたわけですね。

そうすると「コミットメント」は「仕事に対する遂行責任を持って信頼感を与えたい場合に使われる言葉」と言えそうですね。

それぞれの違いって何?

ここまで紹介してきた5つの言葉は「意味が違う」ことは明確に分かりました。
そうは言っても、結局のところ「何が違う」のでしょうか?

そこで、それぞれの言葉を従業員と会社、それぞれの視点に当てはめて考えてみましょう。

モチベーション
従業員:内発的にしろ外発的にしろ、自分の気持ちひとつ
会社:何とかして従業員に出してもらうしかない

従業員満足度
従業員:自分の主観的な判断で良/不良を決められる
会社:全従業員の評価結果を元に知るほかない

エンゲージメント
従業員:会社に対して結んでいくもの
会社:各従業員に対してそれぞれ結んでいくもの

ロイヤリティ
従業員:会社に対して抱くもの
会社:従業員が勝手に抱いてくれるもの

コミットメント
従業員:会社から与えられるのでやるもの
会社:従業員に与えてやってもらうのが当たり前のもの

おそらく「それぞれの気持ちのベクトルが違いそう」な気がしますよね。

ベクトルの違いを踏まえた図が下記です。

気持ちの方向性の違いがあるということはそこに着目すれば違いが見えてきそうですね。

モチベーション↔︎従業員満足度
モチベーションと従業員満足度は両者とも「従業員個人によるもの」という意味では同じ次元にあると言えます。

その違いを挙げるとするなら、「気持ちが結果に反映されるか」でしょう。
モチベーションが高ければ、結果は仕事に反映されます。

しかし、従業員満足度が高くてもモチベーションが会社に関わらないところにある場合は、「従業員満足度は高くてモチベーションが低い」、あるいは「モチベーションは高くても従業員満足度は低い」と言った事態も想定できます。

つまり「モチベーションが高いこと」と「従業員満足度が高いこと」には因果関係がないと言えるでしょう。

モチベーション↔︎エンゲージメント
モチベーションは個人的。
エンゲージメントは双方的です。

つまりモチベーションは「個人の利益を追求するもの」で、エンゲージメントは「自身も含めた全員の利益を追求するもの」と言えそうです。

要するに、モチベーションとエンゲージメントは「そもそもの性質が2項対立の関係にある」と言えるでしょう。

モチベーション↔︎ロイヤルティ
モチベーションとロイヤルティは「従業員側が抱くもの」という点は共通ですが、それぞれのベクトルは、「モチベーションは個人的」で、ロイヤルティは「一方的」です。

そもそもモチベーションは「自分の気持ち次第」なので、相手がいなくとも成立しますが、ロイヤルティは、「会社という相手」がいなければ成立できません

つまり、モチベーションとロイヤルティは、モチベーションと従業員満足度と同じく「似ているけれど違うもの」と言えるでしょう。

モチベーション↔︎コミットメント
モチベーションは個人的で、コミットメントは「一応」相互的です。
「一応」としたのは、コミットメントに対して従業員側が渋々応じている場合もあるからです。

そもそもモチベーションは内発的にしろ外発的にしろ、原動力は従業員個人が抱いた「嬉しい! 楽しい! 大好き!」というポジティブな気持ちです。

もちろんコミットメントにも、「ずっとやりたいと思っていた仕事なので、責任をもってやらせていただきます!」というポジティブな気持ちが原動力になる場合があります。
しかし一方で、「本当はやりたくないけれど、会社がやれって言っているからやるしかないんだよなぁ……」と半ば義務的に応じている可能性があるのもコミットメントです。

そのため、モチベーションとコミットメントは、「前提となる気持ちに違いがあるもの」と言えそうですね。

従業員満足度↔︎エンゲージメント
従業員満足度は個人的。
エンゲージメントは双方的なので、そもそも真逆のものです。

しかし、どちらも会社に対する評価に繋がる要素であることに変わりはありません。
この2つは組み合わせるのが良策でしょう。

従業員満足度↔︎ロイヤルティ
従業員満足度とロイヤルティも従業員個人が抱く感情です。
とは言え、従業員満足度は「満足感」が主であり、ロイヤルティはどちらかと言えば「崇拝」に近い感情です。

そのためシュレディンガーの猫のように、従業員満足度の高い社員のロイヤルティの高さは「高い場合も低い場合もある」と言えるでしょう。

従業員満足度↔︎コミットメント
個人的な従業員満足度と「一応」ではあるものの「相互的」なコミットメント。
好きな仕事ができていれば、従業員満足度も高くコミットメントも高いという理想的な状況はあり得ます。
しかし、好きでもない仕事を渋々行っている場合は「コミットメントは高いけれど従業員満足度が低い」という困った事態も考えられるでしょう。

エンゲージメント↔︎ロイヤルティ
双方向のエンゲージメントと一方的なロイヤルティ。
パッと見は真反対の2者ですが、「エンゲージメントの高い社員のロイヤルティは高い」と言えます。

なぜなら「会社と親密度の高い社員が会社を嫌いなわけがない」からです。

エンゲージメント↔︎コミットメント
エンゲージメントとコミットメントはどちらも「従業員と会社が結び合っている関係」であることは同じです。
しかし、「対等」に結ばれるエンゲージメントと「会社が優位に結ぶ」コミットメントでは、どうしても従業員側の気持ちに違いが出ます。

エンゲージメントは「双方の折衷案」で落としどころを付けられますが、コミットメントではそうもいきません。
この2つは「力のかかり方が違う」とも言い換えられそうですね。

ロイヤルティ↔︎コミットメント
会社に対する「崇拝心」とも言えるロイヤルティと義務的な関係性もあり得るコミットメントではそもそもの前提が違います。
ロイヤルティではネガティブな状況はまずあり得ませんが、コミットメントではネガティブな可能性も大いにあり得ます。

そのためロイヤルティが高いからと言ってコミットメントが高いとは言い切れないでしょう。

まとめ

モチベーションとは仕事に対するやる気のことで、従業員満足度は今の職場環境に対する満足感のことです。

どちらも「従業員の主観によるもの」という点では同じですが、「モチベーションが高ければ従業員満足度も高い」とは言い切れないため、双方に因果関係はないと言えます。

そうは言っても、モチベーションが高いことも従業員満足度が高いことも悪いことではありません。
そのため、双方を高い水準に上げて、必然的に良い状態を作り出せる企業を目指しましょう!

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