Z世代の離職率を抑えることが企業成長のカギ
1990年代後半に誕生し、2020年代に社会参加を進めるZ世代(ジェネレーションZ)。この世代はデジタル技術に非常に精通している一方、ミレニアル世代(ジェネレーションY)やX世代とは異なる価値観を持つことで知られています。企業においても、彼らが新たな主力労働力となりつつある今、その特性を理解し適切に対応することが求められています。
しかし、Z世代に対する認識不足が原因で、マネジメントや人材育成に苦戦するケースが多く見られるのも事実です。本記事では、Z世代の特徴と、離職率を抑えるための具体的な施策について解説します。
Z世代の特徴を正しく理解する
Z世代は、1990年代中頃から2010年代初頭に生まれた世代を指します。インターネットやスマートフォンが当たり前に存在する環境で育ち、情報収集や発信において高いスキルを持っています。デジタルネイティブであることは、職場でも大きなアドバンテージとなる一方で、組織やマネジメントに対する期待もこれまでの世代とは異なるものとなっています。
主な特徴:
- 自分のキャリアに対する高い関心
- 職場での相互尊重と協力を重視
- 内発的動機(仕事の意味や成長、社会貢献)を優先
- 短期間でのスキルアップやキャリアアップを志向
これらの特徴を理解せず、従来の管理方法を適用するだけでは、彼らの能力を十分に引き出すことができず、結果として早期離職につながる可能性があります。
Z世代の離職率と企業への影響
厚生労働省の統計によると、Z世代が多く含まれる新卒社員の約30%が、入社後3年以内に離職しています。この高い離職率は企業にとって深刻な問題です。なぜなら、社員一人の離職による採用代替コストは、業種や職種に応じて年間給与の1.5〜2倍に相当すると言われているためです。
たとえば、年収400万円の社員が離職した場合、その代替コストは600万〜800万円になる可能性があります。このコストには採用活動の経費だけでなく、採用後の教育訓練費や、離職に伴う業務の一時的な停滞による損失も含まれます。
したがって、離職を防ぎ、Z世代が職場で長く活躍できる環境を整えることは、企業のコスト削減と持続可能な成長に直結すると言えるでしょう。
Z世代が求める職場環境
リクルートマネジメントソリューションズの調査では、Z世代が重視する職場環境として以下の要素が挙げられています。
- 相互尊重と協力: お互いを尊重し合い、助け合う文化
- 成長機会: スキルアップやキャリア形成の支援
- 透明性: 組織の方針や評価基準が明確であること
- ワークライフバランス: 柔軟な働き方や休暇取得の推奨
また、Z世代は「上司との良好な関係性」を重要視しており、丁寧なフィードバックや成果の承認、定期的な1on1ミーティングを求めています。彼らのニーズに応えないと、職場でのモチベーションが低下し、早期離職の原因となる可能性があります。
内発的動機づけを重視するZ世代
Z世代は「内発的動機づけ」をも非常に重要視しています。具体的には、以下の要素が挙げられます。
- 人や社会に役立つ仕事
- 感謝される貢献
- 個人的な成長
- 仕事の意味や意義を感じること
- 仲間との支え合いや一体感
これらの要素は、Z世代が「仕事のやりがい」や「成長」を感じるために不可欠なものです。これに対し、「競争」「No.1になる」といった外発的動機づけは、内発的動機ほど重要視されていない傾向があります。
多様な動機づけをバランス良く整える重要性
内発的動機を育む環境を整えることは大切ですが、それだけに偏ることにはリスクがあります。外発的動機(給与、福利厚生、評価制度など)が不十分であれば、社員の不満足を招く可能性があります。そのため、以下のバランスが重要です。
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外発的動機の基盤を整える
適切な待遇や評価制度を提供し、基本的な満足感を確保する。
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内発的動機を育む環境づくり
仕事に意味ややりがいを感じられる仕組みやキャリア支援を整備する。
Z世代の職場における課題と高離職率
Z世代が持つ「成長したい」「キャリアを築きたい」という願いに対して、企業側の対応が不十分である場合、高い離職率につながります。実際、Z世代の新卒社員の約30%が入社後3年以内に離職している現状があります。この問題の根底には、以下のような課題が挙げられます。
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モチベーションの維持が難しい
「仕事がうまくいかず、やる気が続かない」という声が多い。
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相談しづらい職場環境
上司が忙しそうにしているため、助けを求めにくい状況。
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キャリア不安
仕事の成果が上がらない中で、将来が見えず不安を抱える。
これらの不安要素により、Z世代の社員は職場での自信を失いやすくなっています。
入社後1年で直面する「悩みの壁」
Z世代の新入社員が職場で直面する問題として、「自信を失う」という現象が最も顕著であることが、最近の調査で明らかになっています。また、これに加え、「周囲の目を気にして本来の力を発揮できない」という問題も深刻化しています。こうした課題を放置することは、社員の早期離職やモチベーション低下につながるため、企業側が適切に対応することが求められます。
仕事ができない自分にショックを受ける背景と影響
1. 学生時代の成功体験とのギャップ
Z世代の新入社員の多くは、学生時代に学業や部活動などで成果を上げ、自信を持って社会に出ています。しかし、職場では次のような現実に直面します。
影響:
このギャップにより、「自分は思ったより仕事ができない」「自分はこの会社に向いていないのではないか」といったネガティブな感情が生まれ、自信喪失に陥ります。
2. 企業側の期待値の影響
企業が新入社員に高い期待を示すことはポジティブな側面がありますが、次のような場合にはプレッシャーとして作用します。
- 「将来の主力として活躍してほしい」という期待を過度に伝える
- 期待に見合うスキルやサポート体制が整備されていない
影響:
新入社員自身が「その期待に応えなければならない」とプレッシャーを感じ、結果的に自己評価を厳しくしてしまうことがあります。
周囲の目を気にする不安
1. SNS文化と「見られる意識」
Z世代は、SNSを中心に育った世代であり、常に「他人からの評価」を意識して生活してきました。このため、職場でも以下のような不安を抱えやすくなります。
- 「自分の失敗やミスがどう見られているか」
- 「同僚や上司から低く評価されていないか」
影響:
こうした不安から、積極的な発言や挑戦を控えるようになり、結果的に職場での存在感を弱めてしまうケースが多く見られます。
仕事の意味ややりがいを見出せない問題
1. 意義の見えない仕事がモチベーションを下げる
Z世代は、仕事において「社会的意義」や「自己成長」を重視します。しかし、実際には次のような状況に置かれることがあります。
- 単調な作業や雑務が多い
- 仕事が組織全体のどこに貢献しているのかが見えない
影響:
「なぜこの仕事をしているのか」「自分にとってこの仕事は意味があるのか」という疑問を抱え、モチベーションの低下につながります。
このように入社1年目には多くの壁が存在していて、新人社員に対しては、何かしら手厚いフォローや体制がないと離職に繋がるといったケースが増えてるのかもしれません。
これまでの内容を受けてZ世代のマネジメント手法のポイントを3つにまとめました。
Z世代のマネジメント方法<ポイント1>
Z世代の若手社員のマネジメントにおけるポイントは大きく3つに分類できます。
ポイント1:成長につながるように丁寧に指導する
ポイント2:貢献について適切な承認を行う
ポイント3:仕事に意義や意味を伝えてあげる
だれもが丁寧な指導ができるように会社がスキルの細分化を行い、高頻度のフィードバックができる環境を整えることが、最初に必要なポイントです。まずはその方法を紹介します。
スキルの細分化のプロセスの第一歩は、明確な技能と知識のリストアップです。続いて、スキルマップの作成とその可視化が重要となります。企業には成長意欲の高いZ世代の人材が増えていますが、その一方で、学びの迷子になっているとの話もよく聞かれます。
そのため社員は、スキルマップを通じて自分の持つスキルと、これから磨くべきスキルを明確に把握することが重要になります。加えて、そのスキルマップは網羅的にスキルをピックアップすることがポイントです。
もし一部に偏ると、若手は「この会社でしか通用しない人材になりかねない」と考え、それが将来のキャリアへの不安にもつながります。スキルマップと言えば専門スキルであると、そちらに傾倒してしまう場合が多いのですが、それはハイパフォーマーだけを育てる指針となってしまいます。そのため、専門スキルだけではなく、ビジネスパーソンとして必要な共通スキルも指導に組み込むことが大切なのです。
スキルの細分化に向けて
ここで参考になるのが、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」というフレームワークです。
これは、基礎学力や専門知識を活用する力として定義され、コンピュータにおけるOSのような存在と考えられています。OSがスムーズに機能することで、各種のアプリケーション、すなわち専門スキルが本来の力を発揮できるということです。また、社会人基礎力は各業界で必要とされる横断的なスキルとして位置づけられ、持ち運び可能な「ポータブルスキル」として再評価されています。
これは、私自身がエンジニアだった経験や、現場感からもピンとくるものがありました。研修をいくら増やしても専門スキルが高まらなかったこと、顧客からのクレームがこのOSに関する内容が多かったことからも社会人基礎力は大切なスキルだと強く感じました。
このビジネスパーソンの「OS」は、1年目に壁となるあらゆる障害を越えていくために必要な基盤スキルとして非常に適していると言えます。
「社会人基礎力」について
社会人基礎力は、3つの主要な能力と、それを具体化する12のスキル要素から構成されています。具体的には、自ら進んで業務に取り組む「前に踏み出す力」、問題や課題に対して深く考える「考え抜く力」、そして、他者と協力して成果を上げる「チームで働く力」の3つの能力です。
社員教育の早期の段階でこれらのスキルを強化することで、業務において高い成果を出すだけではなく、チームで成果を上げる基本や、困難な状況にも柔軟に対応できるレジリエンスを身につけることができ、持続的に成長していくことができます。
では、社会人基礎力の重要性を理解するために、その不足がもたらす具体的な影響を考えてみましょう。
「社会人基礎力」がないと起こること
社会人基礎力が低い場合、メンバーが成長しないことに加え、マネージャーの部下育成コストも大きくなってしまい、会社全体としての生産性が下がるため組織全体にその影響が波及してしまいます。
次に、社会人基礎力をスキルマップとしてどう細分化していくかについて紹介していきます。
社会人基礎力の解像度を高めるために
時おり、部下が自発的に動かなかったり、独りよがりの行動を取ったりするケースがありますが、これらは社会人基礎力の主体性や働きかけ力、実行力の不足が原因です。この時に多くの上司は、彼らに対して求める人材像を説明し、「前に踏み出す力」が足りないと伝えますが、部下はどうすればよいのかがわからず悩んでしまいます。
このように、プロセスが不明確な状態を放置していると、部下の不安や不満が蓄積されて意欲も低下してしまいます。人的資本経営の視点に立ち、全社員の成長を願うのであれば、求める人材像から必要な行動特性を誰もが実践できる内容にまでかみ砕き、具体的に指導する必要性があるのです。
主体性を求める指示をするのであれば、仕事を受ける際の目的、納期、成果物のイメージを確認します。また、「手戻りがないように進捗2割の段階で報告し、仕事が完了したら、「次はこういった仕事を進めます」や、「何か次の仕事はありますか」といった声掛けをするようにと伝え、具体的なアクションの提示を求めます。
弊社では、この指示が非常にわかりやすいと新人から好評だったため、仕事のアルゴリズムをつくるイメージで様々なアクションをピックアップしていきました。次は、弊社で実際に行ったアクションについて紹介します。
アクションリストの詳細
主体的な行動を体系的にまとめるために、さきほどのアクションを5つのセットにして、抽象的な特性やスキルにグルーピングしていきました。さらに、アクションリストの達成基準を明確にして、評価基準として活用できるようにして、このセットをスキルボックスとして定義しました。
スキルマップの全体像
加えて、ビジネススキルや共通スキルとして、先ほどの経済産業者が提唱する社会人基礎力のスキルを中心にマネジメントスキルまで網羅し、スキルボックスを組み上げてスキルマップを生成しました。この共通の物差しや仕事のアルゴリズム化で、部下に求めるスキル習得の指導や評価を進めていくようにしたのです。
フィードバックするために大切なこと
具体的には、スキルの習得状況をレーダーチャートで構成し、かつ、キャリアステップに必要なスキルや期待値とのギャップを明らかにします。これを活用して、先ほど用意した具体的なアクションの提示、また誤解や間違った認識を早期に修正することで、後の業務の効率化やミスの防止にも繋がりました。
さらに、スキルの習得に関しての承認や賞賛は、本人のモチベーションと自己効力感の向上にも繋がります。以上、スキルの細分化によるスキルマップの作成と、フィードバックを実現するためのギャップの把握について紹介しました。
Z世代のマネジメント方法<ポイント2>
次は、Z世代の若手社員のマネジメントにおけるポイントの2つ目「貢献について適切に承認を行う」について解説していきます。こちらは、1on1や人事評価の場をきっかけとして、実際の面談で承認していくことが重要です。
関係性の質を高める承認活動
若手社員に有効となる承認活動は、大きくわけて「存在の承認」「行動の承認」「結果の承認」の3つです。
「存在の承認」とは、チームや部署、組織の一員であることを認知してもらう、所属感を満たす承認活動になります。具体的には、挨拶などの礼儀や、お互いの顔や目を見て話す礼節、笑顔やアクティブリスニングで承認していくことです。これらは当たり前の行動に思えるものの、自由な職場環境では意外と疎かにしてしまうアクションでしょう。
次に、行動したことを認めることで活動満足度を満たす「行動の承認」です。特に行動に対する感謝を示すことは相手を尊重する大切な声掛けになります。当たり前だ、照れくさいと思わずに、ぜひ積極的に感謝を伝えてほしいです。
最後に、「結果の承認」です。良い悪い関係なくフィードバックしたり、相手の弱みや課題を素直に伝えたりすることの心理的な障壁は非常に高いでしょう。しかし、満足いかない結果の場合は相手を詰めたり無視したりするのではなく、結果を受け止めて向き合うことが大切です。成長を願っていれるのであれば実施すべき承認活動だと言えます。
こういった承認活動が若手社員との信頼関係を高めるうえで重要なこととなりますが、普段はなかなか実践できない状況も多いと思います。そういった場合は1on1の場を活用して実施していきましょう。
承認の場を設計する観点
承認を行う場としての1on1は現場任せにせず、組織全体として意図をもって設計することが重要です。
設計の観点でいくと、目的・アジェンダ・頻度・時間を決めることが必要となります。例えば、目的はお互いの成長のためにアジェンダの例にしたがって、頻度は各週一回、時間は1時間以内と決めることです。
ここで、アジェンダ例をご紹介します。1on1のアジェンダは上図のように5つのポイントで進めていきますが、まずは、日頃の感謝や存在の承認をして、部下が心を開く場を作っていきます。
次は、今職場で困っていること、不安なこと、頑張っていること、プライベートなことをオープンな質問で傾聴していきます。そして、行動と結果のフィードバックをします。この際に、スキルマップの進行状況を見て進めていくとスムーズな進行に繋がります。
さらに成長のすり合わせとして、レーダーチャートを活用したスキルギャップについて課題を特定して、次週からのアクションを決めていきます。アクション推進にあたって不安なことや疑問に思うことを確認していきますが、この作業は時間厳守で終了することが重要です。よほどの問題があるときを除いて、時間内に終わらせることがお互いの生産性の観点でも大切なことです。
スキルマップがあれば、大きな混乱や誤った方法に陥らずに全社一律の基準を持ちながら成長に向かって進めていくことが可能になるでしょう。
Z世代のマネジメント方法<ポイント3>
3つ目のポイントは、意義や意味を伝える方法です。この中にはさらに3つのポイントがありますので、順番に見ていきましょう。
1. 会社の方向性について
まずは、「会社の方向性」についてです。新人の研修やオンボーディングの段階でこれを明確に伝えることで、彼らは会社の大きな流れや方向性の理解を深め、自分の役割や貢献の意義を早期に把握することができます。
では、もし方向性が不明確な場合はどのような影響があるでしょうか。想像してみてください。新入社員が会社の方針やビジョンを理解せず、ただ働くだけの状態です。
従業員が最も不満を招く要因とは
ここで、レデリック・ハーツバーグの二要因理論を紹介します。この理論によると、会社の方針の不明確さは、最も大きな不満の要因とされています。
私の実体験でも、離職率が40%以上に達した際にエンゲージメント調査を行ったところ、多くの意見が「方針の不明確さ」に集まりました。この事実からも、方向性をしっかりと明確にすることは大切なことだとわかります。
オンボーディングの段階で新入社員に対して会社のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を明確に伝え、理解してもらうことは、新人のエンゲージメントを高め、組織へのコミットメントを強化する重要なステップになるのです。
企業理念とMVVの理解度を高める言語化
次に、企業理念とMVVの理解をさらに深める方法をご紹介します。
この際に重要となるのが、「会社の方向性の言語化」です。その中でも特にポイントとなるのは、単に企業理念やMVVだけを言語化するのではなく、MVVに体現するための行動指針までを言語化することです。加えて、さらに踏み込んで行動指針を現場で活用できる仕事術まで解像度を上げることが重要になります。これらはさきほどのスキルボックスと紐づけることでも実現可能です。
方向性の言語化を行うことは、社員の日常的な業務や意思決定の中で明確なガイダンスとなります。
社会貢献に関する考え方の発信
Z世代の若手社員にとって、自社のミッションを理解し、それが社会にどのような意義や貢献をもたらすのかについては働く上で必要な観点であるため、これらを言語化して伝えることが非常に重要です。
例えば、会社のミッションが「ITインフラを支えること」と定義された場合、その背景についての解説が必要になります。ITインフラは、水、電気、ガスと同様に必要不可欠な社会インフラです。法人ネットワークは「経済活動を支えるインフラ」として、通信ネットワークは「幸せを届けるインフラ」として捉えられています。そのように捉えるに至ったエピソードを自身の経験や生い立ちを含め解説すると良いでしょう。
この会社や仕事がどのように社会に貢献しているのかを具体的に伝えることで、仕事に対する意義を感じ、継続するモチベーションにも繋げることができます。
MVVと触れる機会を作り上げる
ただ単なるガイドラインや入社時の解説だけの一過性の施策では、会社の文化を確立することはできません。継続的な接触の機会を創出することも重要です。
そのために、見える化だけでははく、全社員総会や幹部からのメッセージなどトップダウンでの発信がまず重要になります。しかし、それだけでも浸透しません。社員を積極的に巻き込むボトムアップの施策も大切です。
そのひとつが、MVVや行動指針を体現した人を表彰する「表彰制度」です。これにより表彰された人がロールモデルとなり、本人もリーダー候補として目覚めるでしょう。また、社員インタビューでMVVや好きな行動指針などを語ってもらい、それをブログで公開し、社内報でも共有します。このボトムアップの施策により、トップが語らなくとも社員間で会社が大切にする行動指針を語り合うようになるはずです。
このように、新人が入社した研修時だけではなく、継続的に企業が実践していることを見せることで「自社はこんな企業文化を大切にしているんだ」と感じてもらうことができます。この多面的、継続的な施策が重要になるのです。
2. キャリアパスの視点
続いて、2つ目のポイントは「キャリアパスの提示」です。新入社員は自らの未来や成長のイメージを持ちにくいため、未知の環境と多くの新しい情報に圧倒され、どのように進んでいけば良いのか見失いがちです。ここで、キャリアパスの具体例の提示が重要な役割を果たします。
【職種・職位】キャリアパスの見える化
オンボーディングの段階で、先輩や上司から将来の職種と職位イメージ、そして実際のキャリアパスの例を共有することで、新入社員は自らのキャリアの方向性を具体的にイメージする手助けを受けることができます。これにより、自身の将来に対する不安が軽減され、目標や方向性、そのためのモチベーション早期に築くことができます。
【職種】キャリアマップを生成する
さきほどのキャリアパスから、さらに職種について一歩踏み込んで、スキルベースのキャリアマップを作成します。目指すべき人材像と関連するスキル、習得時期を明確に設定し、ピックアップしたスキルを配置していきます。
そして、このキャリアマップを指針として、スキルの習得目標を設定します。これにより、中長期目線での人材育成のプランや道筋が一目瞭然となるため、若手社員は非常に安心感をもってスキル習得にのぞめるようになります。
【職位】昇進条件の明確化と見える化
また、職位に対する昇進やキャリアアップの条件を明確にすることも重要です。
例えば、主任、係長、課長に昇進するための具体的な条件やスキルセットを透明にして共有することで、新入社員は「自分も将来、このようなステップを踏んでここまで成長できるんだ」と実感することができます。
先ほどご紹介したスキルマップから必要なスキルセットを組み込むこともポイントです。これが一つの目標となり、「ここを目指して頑張ろう」と本人のモチベーションを引き上げます。この透明性が新入社員の成長の道筋を明確にし、組織への貢献を促すのです。
このように、職種、職位で明確なスキルベースの基準を設けることが、キャリアの不安を解消して、かつ組織貢献へと接続する設計図となります。
人事評価制度の視点
これらの取り組みを評価して賃金に反映していく「人事評価制度」の設計も大切なポイントです。なぜなら、新入社員というのは自分の努力がどのように評価され、それがどのように報酬に結びつくのかについて非常に興味をもっています。
報酬や評価の仕組みを明確に伝えることができれば、新入社員は自分の貢献と報酬の関連性を理解し、安心して業務に専念することができるはずです。また、この透明性は新入社員の安心感と企業への信頼を築く基盤となります。ただ、これは人事評価が公平公正に運用されてることが前提です。
人事評価制度について、被評価者が一番不満に思うこと
人事評価制度について、被評価者が最も不満に思うことは、評価結果が報酬に反映されないこと以上に、圧倒的に評価の基準が不明確であることだそうです。
不明確になる原因として考えられることは、見えないものを評価項目に入れてしまうことです。特に、「情意目標」は仕事に対する姿勢や考え方になるため、評価者との認識のズレが大きく生じます。
これらの情意目標に基づく評価基準は明確にするのが難しいものです。そこで、業績や訓練、学習など本人の努力で習得可能なスキルに焦点を当て、これらを具体的に評価することで不満を減少させることができます。
その方法は、先ほどご紹介したスキルボックスを活用した評価です。アクションリストとともに実行の判定基準も設けているため、スキルボックスに差し替えることで明確な評価基準を社員に提示することができます。
評価の透明性と公正性を確保することが、組織内の信頼とモチベーションを下げないための鍵なのです。
3つのポイントまとめ
Z世代の若手社員の離職を防ぎ、自己効力感を高めるマネジメントのポイントは大きく3つに分類できます。
1. 成長につながるように丁寧に指導する
2. 貢献について適切に承認を行う
3. 仕事に意義や意味を伝えてあげる
Z世代の若手社員の社会人基礎力の解像度を高めるためには、期待する人材像に対する必要な「行動特性」を誰もが実践できる「アクションリスト」として定めることが重要です。
また、Action (行動修正)のポイントは スキルギャップの把握です。上司⇔部下の間で認識をすり合わせることで最適なフィードバックができるようになります。
その上で、承認を行う場としての1on1は現場任せにせず、組織全体として意図をもって設計することが重要です。
Z世代の若手社員に対しては、複数の観点で働く意義や意味を伝えることが重要です。具体的には以下の3つのアクションが必要になります。
1. 会社の方向性(MVVの言語化と浸透)
2. キャリアパス(将来の職位/職種の伝達)
3. 人事評価制度(報酬アップの道筋伝達)
中でも情意目標に基づく評価基準は明確にするのが難しいものであるため、スキルボックスを活用して評価を行うと良いでしょう。アクションリストとともに実行の判定基準も設けているため、スキルボックスに差し替えることで明確な評価基準を社員に提示することができます。
評価の透明性と公正性を確保することが、組織内の信頼とモチベーションを下げないための鍵だと言えるでしょう。
1990年代後半生まれのZ世代(ジェネレーションZ)は、デジタルネイティブとして、企業に新たな可能性と価値をもたらす重要な存在です。しかし、彼らが持つ潜在能力を十分に引き出すには、これまでのマネジメント手法だけでは対応できない場合もあります。彼らの価値観や特徴を正しく理解し、成長を促進するための環境整備が不可欠です。
特に、内発的動機づけを支える施策や、外発的動機を補完する取り組みをバランス良く組み合わせることで、Z世代が安心して自信を持って活躍できる職場を作ることができるでしょう。これらの対応が、企業全体の成長と持続的な成功につながるのです。
ただ、これらを管理職やプレイングマネージャーに一任してしまうと、管理職の負担と離職率が大幅に上がってしまいます。これらマネジメントを人だけではなくシステムで実現することで、その負担と効率が格段に上がります。
人材育成を仕組み化してマネジメントをもっと楽に運営する方法はこちらの記事で解説しています。ぜひご興味あればご覧ください。最後まで、お読みいただきありがとうございました。
人材育成を低難易度化するスキルマネジメントとは