従業員エンゲージメント
インセンティブ制度を取り入れて企業を活性化するにはどうすれば良い? 要点をまとめて解説します
最近耳にすることも増えた「インセンティブ」という言葉。
「ボーナスの派生系」のように捉えている方も少なくないかもしれませんが、果たして本当にそうなのでしょうか?
今回は「インセンティブ制度を取り入れて企業を活性化していくための要点」を分かりやすくお伝えしていきますね。
そもそも「インセンティブ」とは?
さて、本題を始めていく前に、今回のキーワードである「インセンティブ」についての基本を押さえておきましょう。
インセンティブ(incentive)とは、ラテン語で「励ます」を意味する「incentivus」に由来し、ビジネス用語では「(企業の持続的成長を促すための)社員のモチベーションを引き出せるような施作や動機付け」を意味しています。
また、企業の業績に基づき、社員全員に支給されるボーナスとは異なり、「個人の成績に基づき、個人単位で支給」されるものです。
ちなみに、日本では「ボーナスの1種」という認識が強いですが、「お金でなくともモチベーションアップに繋げられるもの」は、全てインセンティブに当たります。
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インセンティブの種類
この世のあらゆるものと同じく、インセンティブにも「種類」があります。
インセンティブの種類は大きく下記の5つに大別されます。
・物質的/金銭的インセンティブ
・評価的インセンティブ
・人的インセンティブ
・理念的インセンティブ
・自己実現的インセンティブ
それぞれの特徴を確認しておきましょう。
物質的/金銭的インセンティブ
「物質的/金銭的インセンティブ」とは、「目標達成の『報奨金』や『それに類する現物支給品』」などを指します。
このインセンティブでは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した「マズローの欲求5段階説」のうち、「生理的欲求(三大欲求:食欲・性欲・睡眠欲などの生命維持をしていきたい気持ち)」と「安全欲求(危険のない安全な場所にいたい気持ち)」を満たせるとされているんですよ。
そのため、「生活のためにもっとお金が欲しい」と思う人や「安心して働ける職場にいたい」と思う従業員に対しては大きな効果を持つことになります。
ただし、既に上記2つの欲求が満たされている従業員に対しては「効果が薄くなる」可能性があるため、注意が必要でしょう。
評価的インセンティブ
「評価的インセンティブ」とは、「従業員の働きぶりを評価すること」です。
具体的には、「心理的評価(他の従業員のいる場で褒める)」や「地位的評価(成果に応じて昇進させる)」などがあります。
評価的インセンティブを取り入れることは、次にご紹介する「人的インセンティブ」をしていく上でも重要です。
なお、評価的インセンティブのコツは「心理的評価と地位的評価を上手に組み合わせていくこと」ですよ!
人的インセンティブ
「人的インセンティブ」とは「上司や部下、同僚と言った職場の人間性を通じて行動を促すこと」を指します。
また、「居心地の良い集団を形成すること」も含まれています。
この人的インセンティブは、「人間関係を重視」したり、「仲間意識の高い」人物に有効です。
理念的インセンティブ
「理念的インセンティブ」とは、「企業や経営者が掲げる理念や価値観を従業員にも共有させること」です。
この理念的インセンティブは、「マズローの欲求5段階説」の中でも上位に位置付けられる「承認欲求(他人から認められたい気持ち)」や「自己実現欲求(自分自身が満足できる自分になりたい気持ち)」を満たせるとされています。
そのため、「従業員の士気を高めたい」場合に有効な手段となるでしょう。
自己実現的インセンティブ
「自己実現的インセンティブ」とは、「業務を通じて『従業員の目標や夢を叶えさせる』こと」を指します。
具体的には「『やりがいのある仕事』や『満足して働ける環境』を提供すること」が当てはまるでしょう。
名前の通り「自己実現欲求」が満たされるため、これまで上げてきた全てのインセンティブに不足を感じる従業員には最も有効となるかもしれません。
また、「人的インセンティブ」と同様、「人間関係を重視」したり、「仲間意識の高い」人物にも有効となります。
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インセンティブ制度導入のポイントやメリット・デメリット
インセンティブについての基礎知識が分かったところで、実際に導入していく上でのポイントやメリット・デメリットも気になってきますよね?
インセンティブ制度を導入していく上でのポイントは「全ての従業員/職種に配慮できる制度設計をすること」に尽きます。
というのも、「特定の優秀者のみがインセンティブを獲得できる仕様」の場合、「該当者以外のモチベーションが下がってしまう」可能性は高いでしょう。
また、「各個人の成果が把握しやすい」という理由から「営業職のみをインセンティブ対象とした」とすると、「該当職種以外のモチベーションが下がった」り、「企業や組織に対する信頼度が低下するおそれ」も考えられます。
そのため、「全ての従業員/職種に配慮できる制度設計をすること」が肝心となるのです。
なお、インセンティブ制度のメリット・デメリットは次の通りです。
メリット
・従業員のやる気やモチベーションアップを維持しやすい
・社内を活性化できる(コミュニケーションの増加、健全な競争の促進、やる気やモチベーションが維持による離職率の低下など)
・定着率の向上(やる気やモチベーションが維持されるから)
・評価に対する不公平感の軽減(「インセンティブの支給理由」は明確であるから)
・人材確保にも繋がる(インセンティブに魅力があれば、そこに惹かれる優秀な人材を集めやすくなるから)
デメリット
・チームの足並みが乱れる可能性がある(インセンティブ制度は「個人単位」の取り組みのため、「仲間を蹴落としてでも自分が報酬を獲得したい」と思う人物が1人でもいると、「脚の引っ張り合いに変質する」おそれがある)
・企業の成長が滞る可能性がある(「インセンティブ獲得」が目標化されてしまい、「新たな挑戦をしなくなる」ことが考えられる)
・単純な「金銭的インセンティブだけ」では効果が薄い(「お金をもらって嬉しくない人はいない」と思いがちだが、ある一定額以上の収入を得ている場合、「お金ではなく別のものが欲しい」と思っている可能性もあるから)
「一長あれば一短ある」という感じですね。
そのため、実際にインセンティブを導入していくためには、事前の「社内に対するヒアリング」と「聞き取った内容を踏まえた適切な運用」が肝心となっていくでしょう。
インセンティブ制度の活用方法
では、実際にインセンティブ制度を活用していくにはどうすれば良いのでしょうか。
5種のうち、比較導入しやすいのは、「物質的/金銭的インセンティブ」と「評価的インセンティブ」と言えます。
そのため、今回はこの2種に焦点を当てて見ていきますね。
物質的インセンティブを導入していく場合
「物質的/金銭的インセンティブ」のうち、「金銭的インセンティブ」はその名の通り、「達成した目標に応じてお金を出していく」わけですから、分かりやすいですよね。
しかし、「物質的インセンティブってどうすれば良いの?」と思いませんか?
物質的インセンティブを導入する場合、有効な手段は「インセンティブ・ポイント」と呼ばれる仕組みを利用することです。
「インセンティブ・ポイント」とは、「企業内で通用するポイント(社内通貨)を贈る」評価方法で、仲間(peer)から報酬(bonus)を贈られることから、別名を「ピアボーナス」とも言います。
ポイントの進呈基準は、「仕事ぶり」はもちろんのこと、「会議室のドアにドアストッパーを噛ませてくれた」といった細(ささ)やかな気配りなども含んで構いません。
そのため、「社内コミュニケーションの活発化」だけでなく、「職場の雰囲気の向上」にも繋がり、引いては「人的インセンティブの形成にも繋がる」と言えます。
この物質的インセンティブを上手に取り入れた企業としては、医療系IT企業の『株式会社エストコーポレーション』が挙げられるでしょう。
『エスト』社では、「クエスト制度」という名で「上司(役員や事業部長)からの『お題』にチャレンジし、クリアすることでポイントが付与され、会社が用意するさまざまな商品と交換が可能」という物質的インセンティブを実施しています。
ゲームの中にも「本筋とは関係ないものの、アイテムなどを集める上では欠かせないやり込み要素」として「クエスト」と呼ばれる「ちょっとしたお題」がありますよね。
ゲーム感覚でインセンティブに取り組めるのであれば、「やってみよう」と思う人も多くなるはずです。
だから、この事例は「とても上手なやり方」と言えそうですね。
評価的インセンティブを導入していく場合
次に、「評価的インセンティブ」を導入したい場合を見ていきましょう。
既にお伝えしたように、「評価的インセンティブ」の代表的なものには、「心理的評価:他の従業員のいる場で褒める」や「地位的評価:成果に応じて昇進させる」などがあります。
そうは言っても、「他の従業員のいる場で褒めるにしたってどうしよう?」、「成果に応じて昇進させると言ってもどうして良いのか分からない……」ということもあるかもしれませんよね。
そんな場合に取り入れたいのが、「表彰」です。
またしても『エスト』社の事例になってしまいますが、『エスト』社は「『ユニークな評価基準』を基に、月1の全体朝礼での表彰」という「評価的インセンティブ」も取り入れているのだそうです。
物質的インセンティブに魅力を感じない場合でも、評価的インセンティブに魅力を感じる場合は「往々にしてある」のでしょう。
そのため、「複数種類のインセンティブを用意しておく」ことも「活用のポイント」なのかもしれませんね。
まとめ
インセンティブには次の5種類があります。
・物質的/金銭的インセンティブ
・評価的インセンティブ
・人的インセンティブ
・理念的インセンティブ
・自己実現的インセンティブ
また、上手に活用していくためには、「事前に社内に対するヒアリングをし、全ての従業員/職種に配慮できる制度設計をした上で、聞き取り内容を踏まえた適切な運用」をしていくことが大切となるでしょう。
5種のインセンティブのうち、導入しやすいのは、「物質的/金銭的インセンティブ」もしくは「評価的インセンティブ」と言えます。
どのインセンティブを導入していくのであれ、大切なのは「自社の給与や人事形態などにマッチする形式のインセンティブを導入していくこと」です。
あなたの会社に合うインセンティブ制度を導入・活用して、活気ある素晴らしい会社にできると良いですね!
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