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従業員エンゲージメント

従業員満足度から従業員エンゲージメントへ 再注目される「エンゲージメント」 著書スキルマネジメントPart.2

スキルティ 広報部

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2023.01.23(Mon)

※こちらの記事は、著書「従業員エンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント」の内容を基に構成しています。

前回の記事 再注目される「エンゲージメント」 著書スキルマネジメントPart.1では「従業員エンゲージメント(従業員が抱く企業や組織に対する愛着や信頼度合い)が再注目されている背景」をお伝えしましたが、今回の記事では、「従業員満足度から従業員エンゲージメントへと評価指標が移り変わっていった背景」を分かりやすくお話ししていきましょう。

従業員満足度(ES)とは?

さて、本題に入って行く前に、今回のキーワードの1つである
「従業員満足度(ES)」とは何かを、押さえておきましょう。

今、従業員満足度を重視する企業が増えていますね。

「従業員満足度(ES)」とは、「『福利厚生やマネジメント、職場環境、働きがいなどに対して、社員がどの程度満足しているか』を示す指標」です。
英語で書くと「Employee Satisfaction」。
エンプロイイーサティスファクション、と読みます。

この英語の頭文字を取って、「ES」とも呼ばれていました。

最近では、「働きやすさ」や「働きがい」を重要視する人が多いですよね
自分も働くなら、なるべくストレスの少ない、働きやすい職場がいいと思います。

さて、今回は
「従業員満足度から従業員エンゲージメントへ 再注目される「エンゲージメント」
著書スキルマネジメントPart.2」の、特集です!

従業員満足度(ES)から従業員エンゲージメントに至る歴史

では、この記事をご覧の皆さまは、「従業員満足度(ES)と従業員エンゲージメントの違い」を説明できますか?

「同じものの言い方が違うだけだよね?」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんよね。
確かに両者とも「従業員への意識調査の指標となる概念」であることは同じです。

そのため、『日本企業がエンゲージメント経営を実践する5つの要諦』(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー論文 岡田恵子、吉田由紀子ほか ダイヤモンド社 2020)を参考にしながら、確認していきましょう。

「『ウイリス・タワーズワトソン』社(※アメリカのイギリス系コンサルティング会社)の調査結果」によれば、「『従業員意識調査』の始まり」は、「1920年代頃のアメリカ」であると言われています。
以降、1980年代まで、「従業員意識調査における主流のサーベイ(組織調査)」は、「従業員満足度調査」とされてきました。

「従業員満足度調査」って、そんな昔から実施されていたんですね!


しかし、1990年頃から「実施されるサーベイ」が「従業員エンゲージメント調査へと移行」しました。
その背景には、従業員を「資産」から「投資家」とみなした「経営者側の意識転換」があったのです。

また、別の背景としては、「従業員満足度の上昇と企業の業績アップ」に、「明確な関連性が検証されなかった」ことも挙げられるでしょう。
せっかく「多額の資金を投入して、従業員が満足しているか調査をした」のに、予想を下回る結果しか得られなかったのです。これは、たくさんのお金を投入した企業サイドからすれば、さぞガッカリ案件だった事でしょう。

「費用対効果(コストパフォーマンス)の悪さ」を知ったのです。
コスパ、大事!
コスパの悪い調査して、会社が赤字になってたら意味ないですよね。

それを痛感して、経営者側が落胆したのです。

こうした理由から、近年では「従業員満足度調査の進化版」とも言える「『従業員エンゲージメント調査』に企業の注目が集まっている」というわけです。

本記事の内容はこちらの書籍をもとに作成しています

従業員エンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント:中塚敏明著

従業員満足度(ES)と従業員エンゲージメントの違い

弊社(スキルティ株式会社)がお世話になっている『リンクアンドモチベーション』社のエンゲージメント・サーベイでは、「従業員エンゲージメント」は、「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」と提唱されています。

『日本企業がエンゲージメント経営を実践する5つの要諦』内の言葉で言い換えれば、『会社が目指す方向性や姿を物差し』として、従業員がそれらについての自身の理解度、共感度、そして行動意欲を評価する」ことに当たるでしょう。

一方、既に説明したように、「従業員満足度」は、
「『福利厚生やマネジメント、職場環境、働きがいなどに対して
社員がどの程度満足しているか』を示す指標でしたよね。

実は、満足しているように見えても、会社のやり方に不満があったり
企業サイドが想像もしないような事で、悩んでいたり。
そういうことって、普通によくありますもんね。

従業員エンゲージメントを調査することは、企業サイドにとってもプラスですが
社員サイドから見ても「誰にも言えない、不安や悩みをわかってもらえた」という気持ちになって
救われれる事が、あるようでした。

『日本企業がエンゲージメント経営を実践する5つの要諦』内の言葉で言い換えると、『従業員が自身を物差し』として、所属する組織や職場での日々の態度、上司や自身の仕事などについて評価することになります。

調査してみると、企業側の「こうしてほしい」という思いと
社員側の「こうしてほしい」思いって、けっこう差がありそうですよね。

エンゲージメントを調査し
改めて整理することで、「それぞれの概念的な違い」や「調査の前提条件」が「全く異なっている」ことに気づくでしょう。 それがきっと、大切な気付きなんでしょうね。

これらの違いについてのさらなる理解を深めるためにも、より具体的に見ていきましょう。

実際の従業員エンゲージメント調査では、「会社が目指す方向性を設定して」調査を行います。
なぜこのようなことをするかというと

・人と組織の活性化を進めるために、取り組むべき課題
・会社と従業員双方が、データを介して発見していくための調査

を、クッキリ明確にしていきたいからです。
実際の質問項目には、「自社の望ましい未来像」が反映されており、「回答する従業員に内省(ないせい)を促す」意図も込められています。

ちなみに「内省(ないせい)を促す」という言葉には
「自分自身と向き合い、自分の考え、行動について振りかえる」という意味がありました。

つまり、企業は従業員エンゲージメント調査をする事で
従業員に「今いちど自分と向き合って、会社についてどう思っているのか
この先の未来で、どうして行きたいか?」

を、考えてもらいたい。という事なのでしょう。
それは、大切な時間となりそうですね!

参考までに、書籍『グロービスMBAミドルマネジメント(グロービス経営大学院 ダイヤモンド社 2021) 』から抜粋してきた質問項目をいくつか並べてみましょう。

◆従業員エンゲージメント・サーベイの質問項目例
○私は、自分の会社全体としての目的・目標・戦略をよく理解できている
○経営陣は、事業の方向性について健全な意識決定をしている
○自分の会社で働くことに誇りを持っている
○自分の会社はよい職場だと他の人にも勧めたい
○自分の仕事について、給与や福利厚生など公正に報酬を得ていると思う

参考:「グロービスMBAミドルマネジメント」(グロービス経営大学院 ダイヤモンド社 2021) より


なぜこの箇所を引用してきたのか分かりますか?
実は「従業員満足度調査」と「従業員エンゲージメント」では「物差し(=基準となるもの)自体に違いがある」からです。
この2つって、全然方向性の違う調査なんですよね。

従業員満足度調査の場合、「会社が目指す方向性を不透明にしたまま」、調査は行われます。
「社員個人の希望、不満、願い」といった、個人のアンケートになるわけです。

「職場環境」や「給与」、「福利厚生」、「仕事内容」、「上司によるマネジメント」などの「質問項目に対する評価基準」は、 自分にとって満足できるかどうかという『従業員の主観』に委ねられるからです。

さらに気を付けるべきポイントとしては、「同じ質問であっても、『基準が個人によって異なること』」が挙げられます。 まあ、個人的にどう思っているか? 
という調査だから、そうなりますよね。

同じ会社にいても、タイプの違ういろんな従業員がいると思います。
ですから

指示に従って、決まった手順で業務を行うこと』を好む従業員もいれば
自分でガンガン仕事取ってくるタイプや
変化を嫌うタイプ、マニュアル大好きタイプなど

本当に、さまざまなタイプの人間がいると思うのです。

ですから「従業員満足度調査」の評価をすると、「個人のライフスタイルや仕事観が、ダイレクトに反映される」というわけです。個性が出そうですね!

また、満足度調査の結果を受けて「仮に本人の希望が叶った」としても、人間の欲望には限りがないため、他の不足面に目が移るという可能性も、考えられます。

考えられると書きましたが、個人の希望を書くだけでいいなら
・毎月手取りで、100万ほしい
・有給いっぱい
・お昼寝OKの仕事

とか、むちゃくちゃワガママな欲望を、羅列することになってしまいそうですよね。
私は書いてしまいそうです。


こうした傾向がエスカレートしていくと、従業員の意識は「自分にとって都合が良い条件・働き方」を望む方向を示し、かえって「組織の生産性向上を期待できなくなる」かもしれません。
希望だけでいいなら、どんだけでも書けますから。

要するに、「従業員エンゲージメント」の場合、「基準となる物差しはひとつ」しかありませんが、「従業員満足度調査の物差し」は、「従業員の数だけ存在する」わけです。
そのため、「個人の処遇を改善した」としても、「必ずしも組織全体の活性化や課題の解決には結び付かない」とも言えるでしょう。

以上のことから、「従業員エンゲージメントと従業員満足度の違い」は、前もって知っておく必要がありますね。

次回従業員満足度のままで陥る落とし穴 再注目される「エンゲージメント」 著書スキルマネジメントPart.3では、実際に弊社が陥ってしまった「思わぬ落とし穴」のお話をしていきたいと思います。

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    組織の成長を最大化するためには、社員の育成環境を整えることが重要です。スキルの見える化と習慣化こそ、成長を最大化するセンターピンだと考えています。スキルマップで社員の生産性を最大化します。