従業員エンゲージメント
従業員満足度のままで陥る落とし穴 再注目される「エンゲージメント」 著書スキルマネジメントPart.3
※こちらの記事は、著書「従業員エンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント」の内容を基に構成しています。
スキルティ株式会社が陥った落とし穴
前回のお話、従業員満足度から従業員エンゲージメントへ 再注目される「エンゲージメント」 著書スキルマネジメントPart.2では、「従業員満足度から従業員エンゲージメントへと評価指標が移り変わっていった背景」を分かりやすくお話ししました。
今回は弊社が陥ってしまった「思わぬ落とし穴」のお話をしていきたいと思います。
2016年12月に行った「初めてのエンゲージメント調査」で判明したのは
「数値化された『制度・待遇面』における、全社員の満足度の低さ」でした。
そこで、不満解消のため、『企業理念』や『人事制度』などを整えながら、
「一般社員の気持ちを聞き取る」ことも含めて
「組織改革」を、始めました。
そのためにも人事評価面談や、1 on 1ミーティングを積極的に行い
社員間のコミュニケーション改善に、努めたわけです。
その結果もあり、半年後(2017年)の調査結果では、「上司から部下への支援行動」と「傾聴力」が弊社の持つ「強み」として表れ、スコアも急上昇しました。
つまり、「一般社員の不満は消え、新入社員の定着率も上がり、社員全体のエンゲージメントも高まった」のです。
ここまでは順調でした。
コミュニケーションを取っていれば、上司と部下の仲が良くなり
社員全体のエンゲージメント高まって、業績がアップするはず!
と、思い込んでいたのでした。
ところが、「従業員エンゲージメントが改善した」にも関わらず
・経営目標
・社員の平均単価
・粗利益
が改善しない状況が続きました。
さらに、社内の雰囲気や若手社員の様子に「気がかりな点がある」
ことも見えてきたのです。
例えば、「弊社が推奨する資格の取得や、現場での社員増員に向けた取り組みに挑戦する者は
……少数だけでした。
『現状維持でいいや〜』とする若手が、増えていたのです。
また、悪いことは重なるもので、それまで「部下との信頼関係構築に取り組んでいた」
はずの「マネージャー層」から、「離職者が目立ち始める」ようにもなっていました。
その結果、2018年の調査では、「フロントマネジャー職を対象としたエンゲージメント数値」が、中央値(50)を大きく下回る「27.6」という「驚くべき低い値を示した」のです。
社員のエンゲージメントを高めるために、方向性をチェンジして
頑張ってきたのに……
一体どうして、こんな結果になってしまったのでしょうか?
本記事の内容はこちらの書籍をもとに作成しています
従業員エンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント:中塚敏明著
スキルティ株式会社が陥った落とし穴の正体
なぜこのような現象が起きていたのでしょうか?
原因は、当時弊社が目指していた「エンゲージメントの数値改善に向けた施策」が
途中で「従業員満足度を高める施策へと、すり替わっていた」からでした。
従業員満足度を高めるために、ゴキゲンを取りに行くのと
エンゲージメントのアップは、大きく質のちがう話だったんです。
「社歴の浅い社員への支援行動を重視」するあまり、エンゲージメント本来の目的である「組織と個人がともに成長するための社員への意識付け」が、疎(おろそ)かになっていました。
その結果、「一般社員の待遇面での満足度がアップした」反面、「管理職におけるマネジメント業務の負担が激増」し、「業績が停滞してしまう」いわゆる「負のスパイラルに突入していた」わけです。
実際、当時の弊社内では、「上司から部下への過剰な寄り添い」の結果
下記①〜④の現象が起きていました。
① 上司が面談や1 on 1ミーティングの際に、部下からの「○○はできません」や「なぜ私が○○をしなければならないのか」などの不平不満を傾聴する
→ミーティングの長時間化と管理職へのダメージ蓄積
これは単に、グチですよね。
仕事の解決とは、違うものでした。
② ①の結果、「部下への遠慮」をし過ぎて仕事を任せられなくなる
→管理職ではプレイヤー業務が激増し、一般社員ではスキル未習熟と成長の鈍化が起きる
③ ①、②がエスカレートして、部下に対する「能力不足の指摘」や「注意」などの必要な躾(しつけ)までできなくなる
→ルール違反によるトラブル(納期の遅れ・遅刻・報連相の不徹底など)が、頻発
その結果、上司はトラブル対応に追われ、部下は自信を喪失
職場の空気がギスギスすることによって
全社員の仕事に対するモチベーションも、低下していきました。
④ ①〜③の結果、管理職の長時間労働と寄り添い疲れによる離職が進む
→リーダー不在にともなうチームメンバーの負担増大と業績の停滞
以上のことから見えてくるのは「優しくて何を言っても怒らない上司」が率いる
「ぬるくて安全なチーム像」でしょう。
つまり弊社は意図せず、「成長意欲の乏しい若手社員を増加させる組織」を作り上げていたわけです。
これは、若い世代がたまに間違えるのですが
ぬるい、ゆるい=優しい
では、ないんですよね。
たとえば仮に、新人が遅刻をしたとしましょう。
ここで、注意すると「叱られた」と落ち込んでしまうかもしれません。
貴方ならどうしますか?
私なら、サクッと注意します。
遅刻が、「クセ」になるからです。
人間てほぼ9割、クセで生きているんですよ。
だから注意しなければ「遅刻がクセ」になってしまうんです。
実は成功するチームって「勝ちグセ」がついているのでした!
上司も、もっと評価されていい!
「ぬるくて安全なチーム」に、いつの間にかなっていた弊社。
あの頃は、『従業員エンゲージメントと従業員満足度との違い』をまったく理解せず
組織改革に乗り出していたのでした。
反省ですね。
ここから修正し、ずいぶん変わっていったと思いますよ。
ちなみに、弊社のバリュー(企業が共有する価値観、行動指針)には
「みんなでみんなを大切にして、日々1%の成長を積み上げます」という1文があります。
時々、前半部の「みんな」の意味を勘違いする社員もいますが、みんな』の対象者には「部下」だけでなく、「上司」も含まれていました。
つまり上司も部下も、一つのチームだ! という考え方です。
でも、その考え方が
新人や若手に、伝わっていなかったのでしょう。
若手のご機嫌とるのに、マネージャーは疲れ。
ご機嫌とるものの、若手の業績は上がらず
「仕事できもしないのに思いあがった若手と、疲れた上司」が誕生しただけ
だったのです。これは、ひどいですね。
仕事の業績をアップさせることに頑張っている上司や、マネージャーこそが
もっと評価されるべきだったのです。
とは言え、当時の状況を「組織のあり方」から見れば
「管理職に多大な犠牲を強いる支援行動」によって、
「社員間での公平性が、おびやかされていた」とも言えるでしょう。
ただ、「エンゲージメント・スコアの改善を目標」に、「社員同士の対話から始めよう」という「組織改革へのアプローチ方法」は、正しかったと自負しています。
そうは言っても、「方向性を見誤った」場合、「弊社と同様の事態に陥るケースもある」かもしれません。
これから組織改革をしていくのであれば、「弊社と同じ轍(てつ)を踏まない」ためにも、
「『従業員エンゲージメント』と『従業員満足度』のすり替わり」には、十分ご注意ください。
次回なぜ従業員エンゲージメント調査をするべきなのか?再注目される「エンゲージメント」 著書スキルマネジメントPart.4では、従業員エンゲージメントの重要性についてお話をしていきたいと思います。
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